副業詐欺をクーリングオフ!通知方法や解約手順を解説

副業詐欺をクーリングオフ!通知方法や解約手順を解説

「スマホ1台で簡単に稼げる」「簡単な作業で高収入」——。そんな甘い言葉に誘われて副業契約を結んだものの、高額な初期費用を請求され、「話が違う、これは詐欺かもしれない」と不安に駆られていませんか。

業者に連絡しても「一度契約したからクーリングオフできない」「あなたも事業者だから対象外だ」などと言われ、支払ったお金は戻ってこないのかと、途方に暮れている方も多いかもしれません。

しかし、諦めるのはまだ早いです。副業詐欺の多くは法律上、クーリングオフの対象となる可能性があります。

この記事では、副業詐欺で支払ってしまったお金を取り戻したいと考えている方のために、以下の点を詳しく、そして分かりやすく解説します。

  • 副業詐欺がクーリングオフの対象となる法的根拠
  • クーリングオフの具体的な手続き方法と通知書の書き方
  • 業者に「クーリングオフできない」と拒否された際の対処法
  • 期間が過ぎてしまった場合の解約・返金交渉の手段
  • 無料で相談できる公的な窓口

この記事を最後まで読めば、法的な知識がなくても、冷静に、そして具体的に何をすべきかが明確になります。泣き寝入りせず、大切なお金を取り戻すための第一歩を踏み出しましょう。

河野 冬樹

監修者

河野 冬樹 先生

第一東京弁護士会 所属
法律事務所アルシエン

目次

副業詐欺はクーリングオフ可能!対象となる契約と期間を解説

副業詐欺に遭ってしまった場合でも、多くの場合、特定商取引法(特商法)に基づいて契約を無条件で解除できる「クーリングオフ制度」を利用できます。

このセクションでは、なぜ副業詐欺がクーリングオフの対象になるのか、そしていつまでに行使すればよいのか、その法的根拠と期間について解説します。

  • 多くの副業詐欺契約は「業務提供誘引販売取引」という類型に当てはまる
  • クーリングオフが可能な期間は、法律で定められた契約書面を受け取った日から20日間

これらの知識は、業者と対峙する際の重要な武器となります。まずは冷静に、ご自身の状況が当てはまるかを確認していきましょう。

多くの副業詐欺は「業務提供誘引販売取引」に該当

副業詐欺で結ばされる契約の多くは、特定商取引法で定められている「業務提供誘引販売取引」に該当する可能性が非常に高いです。

これは、「仕事を提供するので、そのために商品を買わせたり、費用を払わせたりする」という形式の取引を指します。例えば、「当社が紹介するデータ入力の仕事をすれば高収入が得られる。ただし、仕事に使う高機能なツールを50万円で購入する必要がある」といった勧誘が典型例です。アフィリエイト、ブログ、動画編集、せどり(転売)など、さまざまな名目で勧誘が行われますが、その実態が「仕事の提供」を条件に金銭を要求するものであれば、この取引に該当します。

業者側は「これは個人事業主としての契約だから、消費者保護の対象外だ」と主張することがありますが、裁判例では形式的な名目よりも、契約に至る経緯や当事者の実態が重視される傾向にあります。事業経験の乏しい個人を狙った契約であれば、たとえ契約書に「事業者」と書かれていても、消費者として保護され、クーリングオフが認められる可能性は十分にあります。

クーリングオフ期間は契約書面を受け取った日から20日間

業務提供誘引販売取引におけるクーリングオフ期間は、法律で定められた要件を満たす契約書面(法定書面)を受け取った日から起算して20日間です。

この「20日間」という期間は、消費者が冷静に契約内容を見直し、本当に必要かを判断するために設けられた大切な権利です。注意すべき点は、期間がスタートするのは「契約日」ではなく、「法定書面を受け取った日」であるという点です。もし業者が法律の要件を満たさない不備のある書面しか渡していなかったり、そもそも書面を交付していなかったりした場合は、期間のカウントは開始されず、いつでもクーリングオフが可能です。

さらに、業者が「この契約はクーリングオフできない」と嘘を言ったり、「解約したら違約金が発生する」などと脅したりしてクーリングオフを妨害してきた場合も、期間は進行しません。その妨害が解消され、業者から改めて「クーリングオフができます」と記載された書面を受け取るまでは、20日間が経過していても権利を行使できます。

副業詐欺をクーリングオフするための具体的な手続きと通知方法

クーリングオフの権利があると分かっても、具体的にどう行動すればよいか戸惑うかもしれません。ここでは、実際にクーリングオフを行うための手続きと、その際の重要なポイントを具体的に解説します。

手続きの要点は以下の2つです。

  • 必ず「証拠が残る」形で業者に通知する
  • クレジットカードで支払った場合は、カード会社にも連絡を入れる

これらの手続きを確実に行うことで、返金される可能性を大きく高めることができます。

証拠が残る「書面」または「電磁的記録」で通知する

クーリングオフの意思表示は、後になって「聞いていない」「受け取っていない」といったトラブルになるのを防ぐため、必ず証拠が残る方法で行う必要があります。具体的には、「書面」か「電磁的記録(メールなど)」で通知します。電話だけで済ませるのは絶対に避けてください。

クーリングオフ通知書の書き方と文例【コピーして使用可能】

書面で通知する場合、以下の内容を記載したはがきや封書を送付します。特定の様式はありませんが、必要な情報が漏れないようにしましょう。

クーリングオフ通知書

契約年月日:令和〇年〇月〇日
商品名(サービス名):〇〇(例:オンラインビジネスサポートプラン)
契約金額:金〇〇円
販売会社名:株式会社〇〇
代表者名:〇〇 〇〇 殿

上記の契約を、特定商取引法第58条に基づき解除します。
つきましては、支払い済みの金〇〇円を、下記の口座に速やかに返金してください。

銀行名:〇〇銀行
支店名:〇〇支店
口座種別:普通
口座番号:〇〇〇〇〇〇〇
口座名義:〇〇 〇〇

令和〇年〇月〇日

住所:東京都〇〇区〇〇
氏名:〇〇 〇〇 印

通知の送付は「内容証明郵便」が最も確実

作成した書面は、普通郵便ではなく、送付した証拠が残る方法で送りましょう。最も確実なのは、郵便局が「いつ、誰が、誰に、どんな内容の文書を送ったか」を証明してくれる内容証明郵便です。費用はかかりますが、業者に対して強いプレッシャーを与え、裁判になった際の強力な証拠となります。

また、メールなどの電磁的記録で通知する場合は、送信済みメールを必ず保存し、送信画面のスクリーンショットも撮っておくと万全です。

クレジットカード会社への連絡も忘れずに

もし契約代金をクレジットカードで支払った場合は、業者にクーリングオフ通知を送ると同時に、必ずクレジットカード会社にも連絡を入れてください。これは被害回復において非常に重要な手続きです。

カード会社に連絡し、「副業詐欺に遭ったため、業者との契約をクーリングオフしました。つきましては、支払い停止の手続きをお願いします」と伝えます。これは「支払い停止の抗弁」と呼ばれる、法律で認められた消費者の権利です。この手続きを行うことで、カード会社から詐欺業者への支払いを止めることができ、もし業者が返金に応じなくても、不正な請求から身を守ることができます。

連絡後、カード会社から所定の書類(抗弁書など)の提出を求められることが一般的ですので、その指示に従って手続きを進めましょう。業者に送ったクーリングオフ通知のコピーが必要になることが多いので、必ず保管しておいてください。

「クーリングオフできない」と副業詐欺業者に言われた時の対処法

クーリングオフをしようとすると、悪質な業者は様々な理屈をつけて拒否しようとします。「クーリングオフできない」と言われると不安になるかもしれませんが、その主張の多くは法的に無効です。

ここでは、業者が使う典型的な断り文句と、それに対する法的な反論を解説します。相手の言葉に惑わされず、冷静に対処しましょう。

よくある嘘①:「これは事業者間の契約だからクーリングオフできない」

「あなたは個人事業主として契約したので、消費者保護の対象外。クーリングオフはできません」これは業者が最もよく使う手口の一つです。

しかし、この主張は通らないケースがほとんどです。裁判所は、契約書の形式的な文言よりも、契約に至る経緯や、契約者の知識・経験といった実態を重視します。副業を探している個人の多くは事業の専門家ではなく、勧誘方法に問題があれば、保護されるべき「消費者」と見なされるのが一般的です。安易に相手の言葉を信じず、自分の権利を主張しましょう。

よくある嘘②:「サービス提供済みだからキャンセルできない」

「情報商材のファイルを送ったから」「サポートサイトのIDとパスワードを発行したから」といった理由で、「もうサービスは提供済みなので、クー​​リングオフやキャンセルは不可能です」と主張してくる業者もいます。

これも、法的には通用しない嘘です。クーリングオフ制度は、理由を問わず、消費者から一方的に契約を解除できる権利です。サービスの提供が開始されているかどうか、商品をすでに受け取っているかどうかは一切関係ありません。たとえ情報商材をダウンロードしてしまっていても、期間内であれば問題なくクーリングオフを行使できます。業者の同意は不要であり、一方的な通知で効力が発生することを覚えておいてください。

業者の妨害があった場合、クーリングオフ期間は延長される

もし業者が上記のような嘘を言ったり、「解約したら訴える」などと脅したりして、クーリングオフの手続きを妨害してきた場合、どうすればよいのでしょうか。

特定商取引法では、このような事業者による妨害行為があった場合、その妨害がなくなるまでクーリングオフ期間は進行しないと定められています。つまり、消費者は業者の妨害を恐れることなく、安心して権利を行使できるのです。もし妨害行為があった場合は、その事実(電話の録音、メールの文面など)を記録した上で、後日改めてクーリングオフを行うことが可能です。まずは、専門の相談窓口に連絡し、どのような妨害を受けたかを具体的に伝えましょう。

クーリングオフ期間経過後の副業詐欺の解約・キャンセル方法

「契約書面を受け取ってから20日以上経ってしまった…」と諦めていませんか。クーリングオフの期間が過ぎてしまっても、返金を求める手段がすべて断たれたわけではありません。

クーリングオフとは別の法律を根拠に、契約の解約やキャンセルを主張できる可能性があります。ここでは、期間が過ぎた場合の2つの有効な対抗策を解説します。

消費者契約法に基づき契約の「取消し」を主張する

クーリングオフ期間が過ぎていても、業者の勧誘方法に問題があった場合は、消費者契約法に基づいて契約を「取消し」できる可能性があります。

これは、事業者が不適切な勧誘を行ったことで、消費者が誤認したり困惑したりして結んだ契約を取り消せる制度です。例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 不実告知:「誰でも必ず月収50万円稼げる」など、事実と異なる説明をされた。
  • 断定的判断の提供:将来の不確実なことについて、「絶対に儲かる」といった断定的な表現で勧誘された。
  • 不利益事実の不告知:重要なデメリット(追加費用がかかるなど)を、業者がわざと伝えなかった。

これらの勧誘行為があった場合、誤認に気づいた時から1年間、または契約締結時から5年間は契約を取り消す権利があります。クーリングオフとは異なる武器として、非常に強力な手段となり得ます。

クレジットカード払いなら「支払い停止の抗弁」を申し出る

クレジットカードで支払った場合に利用できる「支払い停止の抗弁」は、クーリングオフ期間が過ぎた後でも有効な手段です。

これは、販売業者との間に問題が生じている場合に、消費者がカード会社に対して支払いを拒否できるという権利です。例えば、「契約したサービスの内容が、勧誘時の説明と全く違う」「業者と連絡が取れなくなった」といったトラブルが該当します。

前述した消費者契約法などに基づいて業者に契約取消しの通知を送った上で、その事実をカード会社に伝え、「業者に契約上の問題があるため、支払いを停止します」と申し出ましょう。この手続きにより、それ以降の支払いをストップできるため、被害の拡大を防ぐ上で非常に効果的です。

副業詐欺のクーリングオフ・解約で困った時の公的な相談窓口

副業詐欺の業者を相手に、一人で交渉や手続きを進めるのは精神的な負担が大きく、困難を伴います。問題を抱え込まず、専門知識を持つ第三者に相談することが、迅速な解決への近道です。

幸い、日本では消費者を守るための公的な相談窓口が整備されています。ここでは、無料で利用できる信頼性の高い相談先を紹介します。

まずは全国の「消費生活センター(消費者ホットライン188)」へ

副業詐欺を含む、あらゆる消費者トラブルについて、最初に相談すべき場所が「消費生活センター」です。

全国の市区町村に設置されており、専門の相談員が無料でトラブル解決のための助言や情報提供をしてくれます。具体的にどうやってクーリングオフの通知を出せばいいか、業者にどう反論すればいいかなど、個別の状況に応じた的確なアドバイスがもらえます。場合によっては、相談者に代わって業者との交渉(あっせん)を行ってくれることもあり、非常に心強い存在です。

どこに相談していいか分からない場合は、まず局番なしの「188(いやや!)」に電話しましょう。最寄りの消費生活センターや相談窓口を案内してくれます。

悪質な詐欺は「警察相談専用電話(#9110)」へ

契約トラブルの範疇を超え、初めから金銭を騙し取る目的だったことが明白であるなど、犯罪の疑いが強い悪質なケースでは、警察に相談することも選択肢になります。

緊急の事件・事故を扱う110番とは別に、警察には相談専用の全国共通ダイヤル「#9110」が設けられています。ここに電話をすれば、専門の担当者が話を聞き、状況に応じて必要なアドバイスや担当部署への引き継ぎを行ってくれます。すぐに捜査が開始されるとは限りませんが、被害の実態を警察に伝えることは、同種の犯罪を防止する上でも重要です。証拠となる資料(業者とのやり取り、契約書など)を整理して相談しましょう。

法的手続きを考えるなら「弁護士・司法書士」に相談

業者との交渉が難航する場合や、少額訴訟などの法的手続きを検討する段階になった場合は、法律の専門家である弁護士や司法書士に相談しましょう。

専門家は、代理人として業者と直接交渉を行ったり、法的な根拠に基づいた書面を作成してくれたりします。専門家が介入することで、業者が態度を改めて返金に応じるケースも少なくありません。多くの法律事務所では、初回相談を無料で行っています。

また、経済的な理由で専門家への依頼をためらっている場合は、国が設立した公的な法律相談窓口である「法テラス」(日本司法支援センター)の利用を検討してください。収入などの条件を満たせば、無料で法律相談を受けられたり、弁護士・司法書士の費用を立て替えてもらえたりする制度があります。

まとめ:副業詐欺のクーリングオフは可能、泣き寝入りせず今すぐ行動を

この記事では、副業詐欺に遭った際のクーリングオフ制度を中心に、具体的な手続きや対処法を解説しました。

重要なポイントを最後にもう一度確認しましょう。

  • 多くの副業詐欺は「業務提供誘引販売取引」として20日間のクーリングオフが可能。
  • 業者に「できない」と言われても、法的には無効な主張であることが多い。
  • 通知は必ず内容証明郵便などの証拠が残る形で行い、カード会社にも連絡する。
  • 期間が過ぎても「消費者契約法」による取消しなどの手段が残されている。
  • 一人で悩まず、消費生活センター(188)や専門家に必ず相談する。

「騙された自分が悪い」と自分を責める必要はまったくありません。悪質な業者の手口は非常に巧妙であり、誰でも被害に遭う可能性があります。大切なのは、諦めずに、正しい知識を持って行動を起こすことです。この記事が、その一助となれば幸いです。

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